Falluja, April 2004 - the book
現代企画室刊『ファルージャ 2004年4月』を引き継ぐ形で、
同書共訳者2名がファルージャおよびイラクについてのニュースなどを
英語から日本語にして紹介しています。
本文中の翻訳部分の語句は、原文に即するようにしています。
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なぜこんなところに縫い目があるんだ――今週のFRIDAY,シバレイさん記事
今週号のFRIDAYに,フリージャーナリストの志葉玲さんが執筆した記事が掲載されている。92〜93ページ。手に取ったら,後ろからめくっていくとすぐに見つけられる。
シバレイさんのウェブログの当該記事

記事は,見出しと小さめの写真(PEACE ONの相澤さん撮影)を含めて1ページでそんなに長いものではない。量的には軽く立ち読みできるが,あくまでも量的にはという話だ。

質的にはどうかっていうと,別。ちなみに私は駅前の書店で立ち読みしてみたが,後ろを通ってく人がぎょっとしてるのがわかった。ひとり,うちの親くらいの年齢の女性は「何,いったい」みたいな目線を飛ばしてくださったので,目には目をでガンを飛ばし返しておいたがこれでよかったんだろうか。

ガラが悪くてすみませんが,ガラ悪くなってないとやってらんないんで。

1ページの記事の対面には,2葉の写真が大きく掲載されている。イラク人ジャーナリストで今年の夏に日本でスピーキングツアーを行なったイサム・ラシードさんによるものだ。
益岡さんによる講演会の報告
イサム・ラシードさんご自身の逮捕・拷問の体験

写真は,29歳のオマール・アハメドさんという男性のご遺体。バグダードのモルグで撮影された。身体のあちこちにかさぶたのような痕がポツポツと残っており,胸の中央に縦に乱暴な縫い目が走っている。子どものころに教科書に載っている人物の顔写真の頬の部分にこういう落書きをしたよなあというような縫い目が。

5年ほど前になるが,英国のロンドンで「でね,ここにこう縫い目があってね」という話を聞いたことがある。臓器を抜き取られて捨てられていたという話(「臓器強盗」というのがあった。薬物で昏睡させて臓器を抜き取るという手口。中には肝臓の一部だけを切り取ってきれいに止血・縫合して放置する事例もあったという)なのだが,そのときに「ここにこう縫い目があってね」と言いながら動かされた指先が指したのはここだったな,とか思う。

実は私も同じ写真を,ラシードさんから人を経由してお預かりしていた。そして……シバレイさんのウェブログのコメント欄に「報告があるたび、いつもどうしていいかわからなくなります」と投稿されている方がおられるが,私もそうである。

……とりあえず,全部で5葉の写真を縮小して縦に並べて1つのファイルにしたものを,オンラインで見られるようにしてあります。頭部にも謎の縫い目があります。
ここをクリックしてください。

どうしろっての?というちょっとした怒り――ただしそれは,もちろんラシードさんに向けられるものではなく,このファイルを私に送ってくださった方に向けられるものでもなく,むろんここに横たわるオマール・アハメドさんに向けられるものでももちろんない。

それは自分に向けられているし,もっと複雑で大きなものにも向けられている。

シバレイさんの記事には,ラシードさんの「家族の誰かが警察に逮捕され行方不明になったら、まず遺体安置所を探す。いまのイラクではこれが常識なんです」という言葉が引かれている。

今年の夏,私のメル友のハリドがバグダードで行方不明になったとき,ご家族はやはりモルグを探した。(正直,「弟がいなくなった」と兄貴がウェブログに書いたとき,ハリドが死体写真になってオンラインに戻ってくるんじゃないかと反射的に考えてしまい,思考も何もかもすべて停止したわけだが――恥ずかしい話,見なかったことにしたかったのだ。)

実際には,ハリドは「幸いにも」諜報機関に直で拘束されており,警察を経由しなかったために拷問はされなかった。しかも拘束の理由が,大学のネカフェで閲覧してた兄貴のウェブログのコメント欄(一部の閲覧者が好き放題に書き込んでいた)に「テロリスト」とかいう語があったためらしく,要するにまったく潔白で,最終的には無事に戻ってきた。が,「取調べ」でこっぴどく殴られてはいる。

ハリドと同じ房にいた貧乏で美男の兄弟はむちゃくちゃな「取調べ」を受けている。
尋問官はナソムに「じゃああいつは300人殺したんだな?」と言った。
「はい,その通りです」とナソムは答えた。尋問官は供述を書き取った。
「で,オペルの車を盗んだんだな?」
「はい,その通りです。」
「黄色いやつか?」
「はい,その通りです。」
すると尋問官はペンを置き,「きさま,この大嘘つき,戦争以来2年以上になるが,俺は黄色いオペルなんか一度も見たことがないぞ」。
……
ナソムは逆さまにぶら下げられて殴打され,そういう尋問が行なわれた。

全文はこちらからどうぞ。(5ページに分割してあります。)

イラクで今起きているこういうことを,「かつてスンニ派がシーア派やクルド人に対して行なってきたことを,今はシーア派とクルド人がスンニ派に対して行なっているだけじゃないか」とわかったような口をきく人がいる。「宗派間対立は昔からあった」と言う人もいる。

そういうことを見たり聞いたりすると,私はどうしてよいのかわからない。特に後者のような言辞に対しては,「だから何」というフレーズしか思い浮かばない。

私は決して楽天主義者ではないが(リアルで私のことをご存知の方はここで笑っているだろう),少なくとも「人間」に対して希望は持ちたいし,多少は持っているつもりだ。(「期待」じゃなくて「希望」ね。)

この1年の間に,バルカンについてのドキュメンタリー番組を何本か見る機会があったのだが,コソヴォのアルバニア人(イスラム教徒)が,コソヴォから脱出したセルビア人(キリスト教徒:セルビア正教会)の隣人について,6年前には悪し様に言っていたのに,今は「私がそんなことを言っていたなんて」とテレビカメラの前で絶句し涙する。

どっちが煽られていたからのもので,どっちが本物だ? 「セルビア人め」という罵りと,涙と。

「宗派間対立」なんてのは,煽られなければ,その中に生きている人たちが状況を説明するために使うフレーズにはならない。

第一,「あいつは○○派だから」が理由になる世界なんて,おそろしくないか?

私はへっぽこな素人だが,一応北アイルランドについてのニュースは継続的に読んできた。煽るも煽らないも,「政治」だ。

"They never ask us if we want a war" -- Stiff Little Fingers, 1979


Stiff Little Fingersが1979年のベルファストで"war"と呼んでいたものは,「最後通牒」や「宣戦布告」のある「戦争」ではない。で,今イラクで起きていることは,「戦後」とか「復興」とかよりも,SLFが1979年のベルファストで"war"と呼んでいたものに近いと私は思う――ブッシュやブレアがそれを"war"と呼んでいなかろうとも。

ついでに言えば,今のイラクは,1970年代の北アイルランドと比べてさえ,もっとひどい。歩いているだけで壁に手をつかされ所持品検査をされたり,監獄にブチこまれて「厳しい尋問」を受けたり(←リンク先で語っている人物についてはいろいろあるかもしれませんが,少なくともこういうのは,その経験をしたのが誰であろうと,「意味」は変わらない),いきなり銃撃戦が始まったり,裏庭で洗濯物を干しているおばちゃんがスナイパーの練習台にされたりしていた北アイルランドと比べても,今のイラクはぞっとするほどにひどい。(「NIはキリスト教徒同士だから」とか言うなよ。そんなのは対立したい連中には何の意味もないのだから。)

それを行なうのが誰であるかではなく,それが行なわれているということ自体を。

投稿者:いけだ

コメント(2)| Track back(0) | 2005-10-08 14:47:23 | イラク全般
■ NO TITLE
はじめまして。こんにちは。
こちらの記事にリンクを張ってしまって
よろしいでしょうか?
臓器売買組織までが大きく関与している
今のイラクの現状に大変恐怖を感じます。
えん (2005-10-11 21:26:52)

■ リンクはご自由にどうぞ
>えんさん
わざわざコメントをありがとうございます。リンクはご自由にしていただいて問題はありません。

http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/webpolicy.html
http://allabout.co.jp/computer/comicalsite/closeup/CU20021130A/
いけだ (2005-10-12 23:19:45)

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