Falluja, April 2004 - the book
現代企画室刊『ファルージャ 2004年4月』を引き継ぐ形で、
同書共訳者2名がファルージャおよびイラクについてのニュースなどを
英語から日本語にして紹介しています。
本文中の翻訳部分の語句は、原文に即するようにしています。
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Falluja, April 2004 - the book

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白燐とはどういうものか、何のために使われたのか、「化学兵器」なのか


画像は、イタリアのRAIニュースのフィルムから作成されたGIFアニメです。先週、とある英語のフォーラムに掲載されていたもの。誰が作ったのかはわかりません。特にクレジットがついていなかったので、お持ち帰り・転載はOKと私は判断しました。(ここからのお持ち帰りなどももちろんご自由にどうぞ。ただし画像への直リンクはご遠慮いただきたく。。。)

このGIFアニメについては、例えば「文字情報は作った人の主義主張、映像そのものは現実、構成は作った人の主義主張」というように見ることができると思います。

画像は粗いけれども、着弾しているのが人工の建造物が密集しているエリアであることは、「照明」の効果によって、はっきりわかります。:-p (着弾の瞬間の静止画像は、RAIニュースのページ(キャプチャ画像)で見ることができます。)

▼以下、太字は追記分(追記せず新記事にしてある情報もあるんですが、追記しておきます)

また、USINFO.State.Gov(米国務省)によると、白燐弾は「照明用として用いた」そうですが、2004年4月の『ノース・カウンティ・タイムズ』の記事では、「朝食を中断して」WPを撃ち込んでいたことが書かれています。朝食の時間帯に照明弾が必要なんでしょうか、イラクでは。:-p(緯度が高くてなかなか夜が明けないような場所ならともかく。)

つまり、これだけでも、国務省の説明は、現場とはまったく関係のない、会議室内の「お話」であると考えられるんじゃないかと私は思います。

追記:ここまで▲を書いたあとで、米軍のスポークスマンが「照明弾という説明は不十分な情報に基づいたものだった」として「白燐弾の対人使用」を認めました。詳細はこちらで。

一方、米軍の説明(「隔月刊 野戦砲兵隊」みたいな、米軍の出してる雑誌)では国務省とは違って:

われわれは白燐を、……煙幕を張る任務で使用し、また、後の戦闘では、塹壕線や偽装蛸壺に潜んでいる反乱勢力に対し、HE(high explosives:高性能爆弾)では効果が見られない場合に、効果的な心理兵器として使用した。

と、作戦に当たった米軍将校が説明しています。

この「効果的な心理兵器(potent psychological weapon)」とは何ぞや?という疑問も私にはあるのですが。。。phychological weaponってのは「比喩的に“武器”」という場合に用いられる表現で「それを言ったら相手は何も言えなくなる」ようなもののこと。(例えば冷戦期のソ連がアメリカに対して「うちの方が先に宇宙に行ったんだもんね」と言う、プーチンがブレアに対して「おたくはわが国がテロリストとして手配している人物の亡命を受け入れた」と言う、など。「涙は女の武器」なんてのもそうでしょうね。)

米軍がphychological weaponと言う場合はどうやらそれとは少し違っていて、2003年3月の開戦時にバグダードに爆弾を雨あられと注いだあれが「衝撃と畏怖(Shock and Awe)」と名づけられたように、ガツンと一発食らわせて相手のやる気をなくさせるphychological weaponと言うらしいです。

さて、RAIの報道以降のネット上での議論(いくつかのフォーラムやブログを見ただけですが)は、
1)米軍がWPを使っているのは事実である というのが前提で、
2)RAIはこれを「化学兵器」だといっているが、WPは「化学兵器」なのかどうか が議論の対象となっている
という感じです。

残念なことに、私の場合、この件については「英語」と「化学」というハードル2つがあり、またネット上での英語圏でのスピードがあまりに速すぎてついていけてなかったってのが正直なところですが、印象としては、「化学兵器かそうでないか」という議論は、「虐待であって拷問ではない」というアブ・グレイブ刑務所での出来事の件(もっとさかのぼれば、「残忍ではあるが拷問ではない」という、北アイルランドでの「5つの尋問テクニック」についての欧州人権委員会と欧州人権法廷での判断というのもありますが)を連想します。

また「化学兵器」ですぐに連想されるのはいわゆる毒ガスですが(マスタード・ガス、サリンなど)、WPについてはこういう短い記述がありました。

When WP or P4 is combined with Oxygen, smoke is given off in the form of P2O5 phosphorus pentoxide, actually twice that P4O10.

This is nasty stuff and is lethal.

白燐が酸素と結合すると(つまり「燃焼すると」ってことですよね)、酸化リン(五酸化二リンP2O5→分子が2つで十酸化四リンP4O10:どちらもPとOはアルファベット)の形で煙が発生する。これが致死性である。(日本語にする際、用語類はウィキペディアで確認しました。)

追記:P4O10について
P4O10については、英文の情報の多くが下記2件の情報に依拠しているようです。

まず、
http://ptcl.chem.ox.ac.uk/MSDS/PH/phosphorus_pentoxide.html
を参照したところ、
Stable, but reacts violently with water, alcohols, metals, sodium, potassium, ammonia, oxidizing agents, HF, peroxides, magnesium, strong bases.

→安定した物質であるが、水、アルコール、金属、ナトリウム、カリウム、アンモジア、酸化剤、HF(? hafnium?)、過酸化物(過酸化水素)、マグネシウム、強塩基と激しく反応する


次に、
http://www.sciencelab.com/msds.php?msdsId=9924773
を参照したところ、
Potential Acute Health Effects:
Extremely hazardous in case of skin contact (irritant), of eye contact (irritant). Very hazardous in case of ingestion, of inhalation (lung irritant). Hazardous in case of skin contact (corrosive). The amount of tissue damage depends on length of contact. Eye contact can result in corneal damage or blindness. Skin contact can produce inflammation and blistering. Severe over-exposure can produce lung damage, choking, unconsciousness or death. Inflammation of the eye is characterized by redness, watering, and itching. Skin inflammation is characterized by itching, scaling, reddening, or, occasionally, blistering.

→皮膚に触れると極度に有害(刺激性)、目に触れても極度に有害(刺激性)。
摂取した場合は非常に有害、吸い込んだ場合も非常に有害(肺に刺激性)。
皮膚に触れると有害(腐食性)。
組織のダメージの量は、接触している長さに応じる。
目に触れると角膜損傷もしくは失明に至る場合がある。
皮膚に触れると炎症・水疱を生じさせる場合がある。
ひどく過度にさらされると(<直訳:severe over-exposure)肺のダメージ、呼吸困難、意識喪失もしくは死を生じさせる場合がある。
目の炎症は充血、なみだ目、ちくちくした痛み(かゆみ)に特徴がある。
皮膚の炎症はちくちくした痛み(かゆみ)、皮むけ、あるいは時として水疱に特徴がある。


また、コメント欄で「冶金系」さんにご教示いただいたソースとして:
http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0545c.html (←P4O10について必見ページのひとつ)
# 「冶金系」さん、ありがとうございました!


そして、化学兵器を禁止している条約では、化学兵器としての目的(人や動物の殺傷)外で同じ物質が用いられる場合というのは除外されているのですが、それにしても「化学兵器の作用を持たないくらいの量での使用」という条件があり、仮に米国/米軍が説明しているように「照明」とか「煙幕」といった用途が目的であったとしても、それだけでは「化学兵器としての作用を持たないくらいの量」かどうかはわからないわけですから、「照明用」とか「煙幕用」と言ってみたところで、それだけで「化学兵器ではない」と言い切ることは無理です。

これら、「化学兵器かどうか」という点については、DailyKosの11月10日記事、CONFIRMED: WP is a CW if used to cause harm through toxic propertiesに詳しく検討されています。

……とまとめたところでガーディアンを見てみたら、ジョージ・モンビオットの記事が出ていました。

The US used chemical weapons in Iraq - and then lied about it
Tuesday November 15, 2005
原文:http://www.guardian.co.uk/comment/story/0,3604,1642575,00.html

【概要】
米軍はファルージャで化学兵器を使用したのか? その答えは「イエス」だ。その証拠は先週イタリアのテレビ局で放映されたドキュメンタリーの中にはない。あれじゃダメだ。白燐弾がイラク人に向けて撃たれたというには弱いし、あれは状況証拠だ。ブログ界隈では動かぬ証拠だと大騒ぎになっていたが。

ブロガーたちによって最初に発見されたのは米軍が発行している雑誌だった。「Field Artillery(野戦砲兵隊)」の2005年3月号で、第二砲兵隊の将校たちが、昨年11月のファルージャ攻撃について得意げに「WPは効果的で多用途だ。白燐は煙幕として使用し、またその後に、塹壕線や偽装蛸壺に潜んでいる反乱勢力に対し、HE(high explosives:高性能爆弾)では効果が見られない場合に、効果的な心理兵器として使用した。われわれは『シェイク・アンド・ベイク』ミッションを行い、反乱勢力が潜んでいる場所から出てこさせるためにWPを使った」(→この記述は別記事参照)と語っている。

その次は、カリフォルニア州のノース・カウンティ・タイムズの記事。2004年4月のファルージャ攻撃のときに海兵隊にエンベッドしていた記者の書いたものだ。「数秒で準備が完了すると、近くにある弾薬の缶から白燐砲弾をつかみ、ミリキンが『砲身を上げろ』と叫んだ。ミリキンが砲弾を落とすと、ボガート伍長が『発射!』と叫んだ。連続して何発も発射され、衝撃でピットの周りに砂埃が立つ。彼らは発火した白燐と高性能爆薬の混合したものを『シェイク&ベイク』と呼んでいる。それが一群の建物の中に送られる。反乱勢力がそこにこもっていることが突き止められていたのだ」。(→この記述は別記事参照)

白燐は化学兵器禁止条約(CWC)の一覧には載っていない。戦場を照らすためや、敵から兵士たちの動きを隠すための煙幕を発生させるためなら合法的に使用することができる。〈略〉しかしそれは、人間に対して直接使用されれば即座に化学兵器となる。〈略〉

白燐は脂溶性で、空気に触れると同時に燃焼する。globalsecurity.orgを引用すると、「熱傷は通常多発的で深く、大きさはさまざまである。目に固体が入ると重傷となる。分子は大気中の酸素がなくならない限りは燃焼し続ける。……白燐の破片が当たれば、骨に達するまでの熱傷となる可能性がある」。

酸化の過程において白燐は煙を発するが、この煙は五酸化リンから成る。米国の工業安全基準によると、その煙は「湿気に触れると熱を発し、粘膜の表面を焼く……煙に触れると、目は重度の熱傷となり、永続的な損傷を受ける可能性がある」。

先週まで、米国務省は、米軍は白燐弾を「ファルージャでは非常に慎重に、照明の目的で、用いていました」と主張していた。「夜間、敵の人員ではなく、敵の居場所を照らしだすために」発射された、と。

新たな証拠を突きつけられ、火曜日に国務省はポジションを変えた。【訳注:国務省のサイトにある文書、Did the U.S. Use "Illegal" Weapons in Fallujah?は、Created: 09 Dec 2004 Updated: 10 Nov 2005となっている。その前は、Updated: 27 Jan 2005だった。】

「われわれに提供されていた情報のいくらかが……正しいものではなかったということが判明しました。白燐弾は煙を出しますが、ファルージャでは照明のためではなく、煙幕のために用いられていました。これはField Artillery magazineの記事でわかったことです。同記事には『塹壕線や偽装蛸壺に潜んでいる反乱勢力に対し、HE(high explosives:高性能爆弾)では効果が見られない場合に、効果的な心理兵器として使用した』とあります。記事によれば、米軍は白燐弾を、敵の戦闘員をいぶり出すために用い、それから高性能爆弾で殺しました」。

換言すれば、米国政府は、ファルージャで白燐が化学兵器として使用されたということを認めているようだ。

侵略者(invaders)が撤回を余儀なくされたことは初めてではない。ナパームの使用についても同様のことがあった。2004年12月、英国労働党所属下院議員のアリス・マーン(Alice Mahon)が、英国防省のアダム・イングラム閣外相に対し「ナパームもしくは類似の物質が、イラクにおいて、連合軍によって、(a)戦争中 また (b)戦争後に使われたかどうか」をたずねた。閣外相は「戦争中もその後も、イラクにおいて連合軍部隊によって、ナパームは一切使用されていない」と答えた。

注視してきた人々はおかしいと思った。2003年3月、バグダードへの進撃の途上で、に米海兵隊が焼夷弾をチグリス川の橋やサダム運河に投下したという報道は広くあったのだ。海兵隊の司令官は、「いずれでもナパームを使った」と認めていた。エンベッドのジャーナリストたちは、クウェート国境のサフワン・ヒルにナパームが投下されたと伝えていた。2003年8月、ペンタゴンは、海兵隊は「マーク77爆弾」を投下したことは事実であると認めた。

これらが含んでいた物質はナパームではなかったが、その機能は「非常に類似している」とペンタゴンの情報シートに書かれている。ナパームは石油とポリスチレンから作るが、マーク77のジェルはケロセンとポリスチレンから作られる。投下される身になってみれば、それでいかほどの違いがあるんだろうか。

今年1月に、ハリー・コーエン下院議員がマーン議員の質問を繰り返した。コーエン議員は「マーク77爆弾が連合軍によって使用されていたのかどうか」を問いただした。イングラム閣外相は、米国は「私たちに対し、マーク77爆弾は、イラクにおいていかなるときにも使っていないと断言した。マーク77は本質的にナパーム弾筒であるが」と答えた。

米国政府はイングラム閣外相に嘘をついていた。閣外相は6月になって議員への私的な書簡で、彼の陳述を撤回しなければならなかった。

イラクとの戦争は2つの理由で必要である、と私たちは言われた。サダム・フセインは生物・化学兵器を所持しており、いつかそれらをほかの国に対して使うかもしれない、という理由が1つ。そして、自国民に対して化学兵器を使うなど、いろいろな犯罪を犯してきたサダムの圧制からイラクの人々は解放されなければならない、というのが1つ。トニー・ブレア、コリン・パウエル、ウィリアム・ショークロス(→プロフィール)、デイヴィッド・アーノロヴィッチ(→ガーディアンとかに書いてる評論家、ウィキペディア)、ニック・コーエン(→ガーディアンとかに書いてる評論家、プロフ)、アン・クルイド(→労働党議員で元反戦・現戦争支持、ウィキペディア)ら多くの人々が、サダムが1988年にハラブジャでクルド人に毒ガスを使ったことを根拠として、自説を論じた。彼らはこの戦争に反対する人々を、イラク人の身になって考えていないとして非難した。

それほどまでにイラク人のことを考えているというのなら、これらタカ派の連中の誰一人として、連合軍による非通常兵器(unconventional weapons)の使用に反対の声を上げていないのはなぜだろう。

彼らの中でこのことについて関心を示しているのは、アン・クルイドだけだ。今年5月、彼女はガーディアンに投稿している。「現代版のナパームが米軍によって使用されている」という報道は、「まったく根拠のない話です。連合軍はナパームは使用していません。ファルージャでの作戦においても、そのほかの場合においても」と。

彼女はどうしてそれを知ったのか。外務省の閣外相が告げたからだ。侵略前に、クルイドはイラクをまわり、イラク国民に対するサダムの犯罪を調査した。そして英下院に対し、そこで発見したものには涙が出た、と語った。

侵略後、彼女は閣外相のことばを額面どおりに受け取った。ネットで30秒も調べれば、まったく根拠のないはったりだということがわかったのに。クルイドはイラクの人々のためにと言ってきたのだが、実際どこまで本気なのだか。

大量殺人、拷問、不法監禁、化学兵器の使用で起訴されているサダムは、死刑判決を言い渡されるかもしれない。確かにサダムはこれらすべての罪状について有罪だ。

サダムを政権の座から追った者たちもそうだろう。

Monbiot.com


投稿者:いけだ

コメント(18)| Track back(0) | 2005-11-16 20:33:24 | 白燐(WP)の使用
■ 条約に於ける条件は条約対象物に掛かります
新エントリーを立てられたようですので、こちらに書かせて頂きます。

>「化学兵器の作用を持たないくらいの量での使用」という条件
とのことですが、この一文は文脈の意味的に重要な前提条件を排除してしまっているものと思われます。

少し脇にそれますが、窒息性の化学兵器の1つである塩素は無論のこと有毒ですが、同時に産業的にも多用される物質です。
例えばPVC(ポリ塩化ビニル)の年間生産量は日本だけで200万トン、世界で見れば2000万トンにも達し、そのPVCの構成質量の57%が産業的に生産された塩素です。
つまりPVC関係だけで年間1000万トン以上の塩素が世界中で生産されているということです。
他にも塩素は産業的に多様な利用がされており、飲料水一つ取っても塩素無しには文明社会は維持できません。
同じく窒息性の化学兵器であるホスゲンや、シアン化物である青酸もまた産業では欠かせない物質です。

以上を踏まえて考えるに、上記の条件とは(消費し殺傷効果を発揮されることを期待される)兵器利用であること、が更なる前提条件としてあると考えるべきです。
※樹脂製の兵器部品まで化学兵器の範疇に入りかねないので「消費し〜」と付け足しました。

つまり「化学兵器の作用を持たないくらいの量」とは、化学剤の生化学的な作用が検出されるかどうかではなく、実用上、つまり軍事戦術的に有用とはならない量を指すものと考えるのが妥当です。
何故なら、対抗薬剤や無効化装備の開発などで、化学兵器そのものを利用せねばならない状況は確実にあります。
そういった事象を留意しての条件付けであると解釈し、決して無条件で人類社会全てに掛かる条件と解釈すべきでは無いかと存じます。

従って
>そして、化学兵器を禁止している条約では (中略失礼) それだけで「化学兵器ではない」と言い切ることは無理です。
の一文は少し的を外しているかと。

化学兵器禁止条約とは正に言葉通りに化学兵器を禁止しているのであって、"「化学兵器の作用を持たないくらいの量での使用」という条件"もまた化学兵器だけを対象としていると考えるべきでしょう。
故に、現状では化学兵器であることが確定していない兵器に対して、化学兵器だけに掛かる条件を当てはめるのは、順序が逆であると思われます。

まず、化学兵器であることを立証するのが先決であろうと愚考する次第です。

P.S.一つ謝罪しつつ訂正します。
脂溶性の高さは皮膚からの吸収度を向上させるとのこと。
先に上げた摂取プロセスだけでなく、皮膚・粘膜からの直接吸収を燐の摂取に関する主なプロセスとして挙げる必要があったようです。
誠に申し訳ない。
冶金系 (2005-11-29 17:25:51)

■ 続き
○毒性
燐及び燐酸化物が示す現象的は"びらん剤"とされる化学剤が示す症状に近いようです。
それは報道されている画像や、証言からも明かであると思います。
曰く「皮膚・目・呼吸器に作用し接触面をびらん(やけど)させる」という部分です。
但し、びらん性化学剤はいずれも「常温で液体、液体・蒸気で作用」とあるので、この部分では該当しませんが、例外もあるかも知れませんので、この点は無視します。

びらん剤に限らず、化学兵器は曝露により死に至る可能性が高いとされていますので、ここでは燐の毒性・致死性に関して焦点を絞ります。
※化学兵器には無力化剤・暴徒鎮圧剤などの非致死性化学剤も含まれますが、ここでは敢えて除外しています。

さて。燐の曝露によって顕在化する症状としては、燐の摂取による健康障害、びらん性の致死要因の一つである肺水腫による呼吸困難、及び広範囲の薬品火傷によるショック症状の3つが主立ったものであると思われます。
ところが燐の毒性とは、燐の体内摂取による影響がメインとされており、現象的に観察できる"びらん性"は顕在化した毒性の結果として見なされていないません。

日本の「毒物及び劇物取締法」では燐の毒性を「主として体内に吸収されて細胞の原形質を冒し、酸素の供給を妨げ、代謝機能に障害を来し、諸種の器官に脂肪変性を起こさせるもの」と定義しています。これは砒素や鉛と同カテゴリーです。
他の定義である「接触した局部の細胞に作用して凝固・崩壊・壊疽を起こさせる(酸類・塩類)」「血液に作用して酸素供給を阻害(シアン化物・塩素酸塩類)」「中枢神経と心臓を冒す(メタノール・クロロホルム)」「神経の正常な機能を妨げる(有機燐製剤)」などには該当していません。
勿論、副次的にはあるかも知れませんが、主毒性とは見なされていません。

つまり皮膚接触や吸入したこと自体ではなく、体内摂取されてからが燐の毒性の本領であって、接触による皮膚の火傷や吸入による肺水腫を生じさせる可能性よりも、生理的な燐の悪影響の方に重きが置かれているのです。
日本に於ける燐の摂取は有機燐化合物(殺虫剤など)によるものが多いために、有機燐については別に分類されていますので、この定義は燐そのものに関する現段階の知見としては最有力であろうと存じます。
何故なら劇毒法では動物だけでなく、ヒトへの実際的な知見(事故例など)も含めて、定義が定められているからです。

すると若干意地の悪い言い方になりますが、報道や幾つものブログで取り沙汰されているショッキングな映像の数々や「中から焼かれる」といった証言が、燐の化学兵器的な殺傷性と関わってくるかどうかが、かなり怪しくなってきます。
燐が示す毒性は肝臓障害や代謝不良など、専門家が目で見てもなかなか判りにくい内科的症状がメインであり、視覚的に訴えるものにはなり得ないからです。
言うまでもないですが、燃える燐を浴びて焼死するのは、燐が化学兵器的性質を有しているからではありません。一般の燃料や衣服と同様に燐が可燃物だからです。

つまりあの映像や証言は、燐の毒性が化学兵器としての能力を示すかどうかを担保せず、また、仮にあったとしても副次的に限定される部分についてだけ述べている、ということになります。
冶金系 (2005-11-29 18:40:15)

■ 最期に
注釈:燐の毒性が少ないと言っている訳ではありません。念のため。

補足:先の定義だけでなく定量的な基準として、毒劇法で毒物と見なされるには以下の条件のうち1つ以上を満たす必要があります。
それぞれLD50(半数致死摂取量)での表記ですが、経口で30mg/kg以下・経皮で100mg/kg以下・ミスト吸入で0.5mg/L(4hr)以下、のいずれかです。
ちなみに”ミスト吸入で0.5mg/L(4hr)以下”とは、1リットルの空気に0.5mgのミスト濃度がある環境で4時間呼吸をすると半数が死ぬと言う意味です。

参考:燐の大気曝露限界濃度(健康を害さない濃度上限)は0.1mg/m3、LD50(マウス・経口)4.8mg/kg、LD50(イヌ・経口)50mg/kg、急性毒性指標の一つであるLDLo値(LDLo:Lowest Published Lethal Dose:最小致死量)ではヒト・経口で1.4mg/kgとされ、毒性は比較的高い毒物です。
ちなみにP2O5はLC50(半数致死濃度)でマウス・吸入:271mg/m3(1hr)

化学系某社のMSDS:
燐 http://junsei.ehost.jp/productsearch/msds/22035jis.pdf
P2O3 http://junsei.ehost.jp/productsearch/msds/30075jis.pdf


○法的側面
Wikipedia:化学兵器禁止条約
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E5%85%B5%E5%99%A8%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%9D%A1%E7%B4%84
経済産業省:化学兵器禁止法の概要
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/cwc/200kokunai/202horitu_gaiyo.htm

この中に日本がCWC批准を受けて作られた国内法規「化学兵器禁止法」の規制物質一覧があります。
燐化合物が第二種指定物質の原料物質として規制され、また燐を含む有機化学物質(殺虫剤など)もまた指定されていますが、純粋な燐及び燐の酸化物は指定外です。
諸外国のCWC関係法の詳細は存じませんが、いずれにせよCWCを根拠として作られたものですので、日本とさして変わらないものと思われます。


○結び
無論、将来的には燐の毒性によって化学兵器として認定される可能性はあります。
なにしろ国際条約だけでなく法規制なども必要に応じて改正されますので。
しかし今の段階では、純粋な燐及び燐酸化物を化学兵器であるとするのは、化学的にも医学的にも些か根拠が足りないように思いますが、如何でしょうか。
冶金系 (2005-11-29 18:42:36)

■ 致死性ガスと騒ぎ立てるのはおかしいのでは
>酸化リン(五酸化二リンP2O5→分子が2つで
>十酸化四リンP4O10:どちらもPとOはアルファベット)
>の形で煙が発生する。これが致死性である

この煙はよほど大量に吸い込まない限り死なないようです。

http://www.globalsecurity.org/military/systems/munitions/wp.htm
>Casualties from WP smoke have not occurred in combat operations.

>There are no reported deaths resulting from exposure to phosphorus smokes.

>Generally, treatment of WP smoke irritation is unnecessary. Spontaneous recovery is rapid.

戦闘での死亡例が有りません。

http://www.remus.dti.ne.jp/~igaya/k020831(6).html

そして自衛隊は総合火力演習で観客席の目の前で白燐弾を炸裂させ、煙が観客席を派手に巻き込んでます。でも誰も死傷者は発生していない・・・
名無しWP弾 (2005-11-29 21:52:02)

■ NO TITLE
リンク失敗したのでこちらへ。

http://www.remus.dti.ne.jp/~igaya/020831hp0001.gif
名無し (2005-11-29 21:55:00)

■ NO TITLE
リンク失敗したのでこちらへ。

http://www.remus.dti.ne.jp/~igaya/020831hp0001.gif
名無し (2005-11-29 21:55:04)

■ 白煙
名無しWP弾さんが白煙について書かれたのでその補足を。
燐の燃焼生成物であるP2O5の吸入毒性は
 マウス・吸入 LC50:271mg/m3(1hr)
 ラット・吸入 LC50:1217mg/m3(1hr)
 ラビット・吸入 LC50:1689mg/m3(1hr)
 モルモット・吸入 LC50:61mg/m3(1hr)
と、かなりバラツいてますが確かな数値で出ています。

この白煙は状態としては1ミクロン以下の固体微粒子=フュームです。
1ミクロン以下とされるフュームよりも粒子が大きいダストであることはまず無いと思います。
仕事柄、粉体はよく扱いますが、1ミクロン以上の粒子で真比重が2.4もあると粉がぶわっと舞いはしますが煙にはなりません。
数分〜10分程度で沈降して床に溜まってしまいます。小麦粉を思えばお判りになると思います。

仮に真比重2.4g/ccのP2O5が、粒径0.5ミクロンの真球粒子として濃度800mg/m3(上記の平均)として存在するとした場合、その粒子数は空気1m3当たりで4兆6000億個、1cc当たりなら460万個の微粒子があることになります。
普通の大気をパーティクルカウンター(粉塵計測器)などで計測すると、状況によって差はありますが1m3あたり数十万〜数百万個、つまり1cc当たり0.1個〜数個というところで、1ccあたり数百万個のフュームは恐ろしく濃密な煙にしか見えないと思われます。

つまり上記の吸入毒性は「恐ろしく濃密な煙の中で1時間息をすると半数の者が死ぬかも知れない」という意味になります。
モルモットの値を用いて濃度を13分の1に減らしたとしても、濃密な煙であることには何ら変わりありません。

ぶっちゃけ毒性で誰かが死ぬ遙か前に、吸うと咳き込む刺激性のある煙を我慢できずに煙の外へ出ようとするでしょう。
また煙は速やかに拡散するのが自然です。風があれば尚更です。
発煙弾を屋内に撃ち込んだ後に、開口部を閉めて回ればその限りではないでしょうが、敵と思しき者が居る建物の戸締まりする米兵というのは流石に・・・
建物に対して野砲の砲撃をしたなら、大穴が開いて戸締まり不可能でしょうし、そもそも着弾地点に味方が居るはずもなく。

よって件の白煙弾を用いるにあたって、毒性を考慮しなかったり演習で盛大に白煙を焚くのも、ある意味当然と思われます。
昏睡状態で動けない人間などでもない限り、危険性がないと判断できますので。

※一つ書き忘れていました。
LD50やLC50などは全て急性毒性で、内臓疾患や骨の壊疽を生じさせる慢性毒性ではありません。
数時間を単位としたスパンで発症なり死亡する様な毒性を示す指標です。
冶金系 (2005-11-30 10:24:12)

■ 御礼(冶金系さん、名無しWP弾さんへ)
冶金系さん、名無しWP弾さん、たびたびのご教示ありがとうございます。

冶金系さんのコメントは、プリントアウトしてマーカー片手に拝読しております。(数字がいっぱい出てくると、手を動かさないと頭に入らないので……(^^;)まだ「理解した」とはいえない状態ゆえ、ひとまず御礼のみ。

また、レスが遅れてしまっていることもお詫びいたします。m(_ _)m

ほかに書かなければならないこと(CPTの人たちが拉致された件は特に緊急ですので)を優先させていました。

ちなみに、WPのことを「化学兵器だ」と断言していたのは、元米軍人(RAIのフィルムでインタビューに応じていたジェフさん)です。製作者はそれに基づいて番組を制作していたように私には思えます。

この件、改めてまとめた記事を書いています。数日後になると思いますが、必ずこのウェブログにアップしますのでよろしくお願いいたします。
いけだ (2005-12-02 15:25:58)

■ MK−77?
※以下は、別記事
http://teanotwar.blogtribe.org/entry-b3313cb42d6f5c3d5c34bc8617b06cb0.html
に投稿したコメントと同一内容です。念のためのダブルポスト。

ところで12月1日付けの米地方紙(だと思います。ボストン・ヘラルドのグループのようです)の記事にこんな記述があったのですが:
http://www2.townonline.com/wellesley/opinion/view.bg?articleid=380462

In U.S. military weaponized form, white phosphorus is mixed with jet fuel in 500-pound bombs, and called MK-77.

「米軍において兵器化された形では、白燐は500ポンド爆弾でジェット燃料と混合され、MK−77と呼ばれている。」

Colloquially, military personnel refer to MK-77 as WP (for white phosphorus) or Whiskey Pete.

「日常の用語では、軍人はMK−77のことをWP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ。」

……これが本当かどうか、私でもわかるサイトがあればご教示いただけないでしょうか。冶金系さん、名無しWP弾さん以外の方でも、もし「こんなのあるよ」ということがお分かりの方はコメントいただけますとありがたいです。

なお、上記の記事を書いた人は、ゲスト・コラムニストのRobert Sarlyさん。記事の最後のページに、Robert Sarly is a resident of Sabrina Roadと紹介されているだけで、著作などはないようです。
いけだ (2005-12-02 15:28:17)

■ MK−77についての英国の文書
MK−77については、RAIのフィルムの最後の方で英国での動き(アダム・イングラム国防閣外相がその使用を認めたという件)に関連したくだりがあるのですが、RAIのサイトにそのときのイングラム閣外相のレターの画像が上がっているので、リンクを貼り付けておきます↓。

http://www.rainews24.rai.it/ran24/inchiesta/foto/documento_ministero.jpg
いけだ (2005-12-02 15:37:12)

■ Mk.77に白リンは入っていません。
>「米軍において兵器化された形では、白燐は
>500ポンド爆弾でジェット燃料と混合され、
>MK−77と呼ばれている。」

>「日常の用語では、軍人はMK−77のことを
>WP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ。」

完全に間違いです。Mk-77は戦後開発されたナパームBと呼ばれる種類で、中身はベンゼン(25%)、ガソリン(25%)、ポリスチレン(50%)で構成されています。(成分比率は記憶に頼ってるのであやふやですが、白リンは入っていないことは間違い無い)

戦争中に開発された初代ナパームの組成はナフサとパーム油が主材ですが、添加剤として亜鉛等と共にリンが含まれていた(比率から言えば数%にも満たない少量)為にこれを持って『ナパームには白リンが詰められている』と勘違いした人が多数いて、未だに訂正もされていないのでしょう。

Mk.77は戦後開発型で成分が全く異なっており、リンは一切入っていません。


米軍がMk.77を市街地で使用したならCCW条約違反です。(条約に入ってはいないけれど)これは航空兵器なので「空中からの投下」に分類されます。故にMk.77の着弾地点を割り出し、証明できれば白リン弾で騒ぐよりもよほど効果的だと思いますが・・・ナパームで焼かれたらどうなるか、ですか? 直撃ならば骨も残りません。燃焼温度は白リンよりも低いのですが持続時間と量が段違いなので。まぁ、通常爆弾でも直撃を受ければ人間は原型を留めませんが。

ところでMk.77は湾岸戦争で在庫を使い切ったと聞いてたんですが、まだ残ってたんでしょうか。アフガンで使用された例を知らないので、既に廃棄されたものと思っていました。
名無しWP弾 (2005-12-03 00:30:40)

■ Mk.77に白リンは入っていません。
>「米軍において兵器化された形では、白燐は
>500ポンド爆弾でジェット燃料と混合され、
>MK−77と呼ばれている。」

>「日常の用語では、軍人はMK−77のことを
>WP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ。」

完全に間違いです。Mk-77は戦後開発されたナパームBと呼ばれる種類で、中身はベンゼン(25%)、ガソリン(25%)、ポリスチレン(50%)で構成されています。(成分比率は記憶に頼ってるのであやふやですが、白リンは入っていないことは間違い無い)

戦争中に開発された初代ナパームの組成はナフサとパーム油が主材ですが、添加剤として亜鉛等と共にリンが含まれていた(比率から言えば数%にも満たない少量)為にこれを持って『ナパームには白リンが詰められている』と勘違いした人が多数いて、未だに訂正もされていないのでしょう。

Mk.77は戦後開発型で成分が全く異なっており、リンは一切入っていません。


米軍がMk.77を市街地で使用したならCCW条約違反です。(条約に入ってはいないけれど)これは航空兵器なので「空中からの投下」に分類されます。故にMk.77の着弾地点を割り出し、証明できれば白リン弾で騒ぐよりもよほど効果的だと思いますが・・・ナパームで焼かれたらどうなるか、ですか? 直撃ならば骨も残りません。燃焼温度は白リンよりも低いのですが持続時間と量が段違いなので。まぁ、通常爆弾でも直撃を受ければ人間は原型を留めませんが。

ところでMk.77は湾岸戦争で在庫を使い切ったと聞いてたんですが、まだ残ってたんでしょうか。アフガンで使用された例を知らないので、既に廃棄されたものと思っていました。
名無しWP弾 (2005-12-03 00:30:41)

■ ちなみに
ナパームの語源は主原料である「ナフサ+パーム油」からではなく、ゲル化状にする為の添加剤、「ナフテン酸+パルチミン酸」から来ています。

ところがナパームBは主原料にしても添加剤にしても、どちらもそれらを使っておらず(ゲル化させるための物質はポリスチレン)厳密にはもうナパームとは呼べなくなりました。

しかし使い方と効力は同じ(強化された)のでナパーム扱いしてもなんら構いません。
名無しWP弾 (2005-12-03 00:42:39)

■ ・・っていけださん、これ正解が書かれてるじゃないですか。
いけださんの書いた記事にほぼ正解のものがありますよ。


http://teanotwar.blogtribe.org/entry-a284f1d6ed213159b657b4ef27a6509c.html
>米軍が現在使っている発火性兵器はMK−77だけである。MK−77は、ベトナムと朝鮮で使われたM−47とM−74ナパーム弾を発展させたものである。この新しい兵器では、発火性ジェルは、灯油から創られるジェット燃料とポリスチレンからなっている。MK−77爆弾には、また、酸化物質も含まれていると言われている。このため、一度火が付くと消すのがさらに難しくなっている。
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ガソリン+ベンゼンから成分をケロシン(灯油。各種添加剤を加えてジェット燃料になる)に変えたんでしょうか。ただ酸化物質については入ってないと思います。実は普通の爆弾の火薬に酸化剤は入っているのが普通で、ナパームやFAE、サーモバリックは入ってません。


>例えば、軍属記者の二人(シドニー・モーニング・ヘラルド紙とCNN)は、2003年3月21日、クウェート国境地帯を望むサフワン丘のイラク軍監視ポストに対する発火性爆弾による攻撃を目撃している
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この条件なら、市街地への投下ではないので条約上も無問題です。つまり問題となるのは市街戦への投入がされたかどうか。
名無しWP弾 (2005-12-03 00:52:02)

■ そうなんですよ〜
>名無しWP弾さん

まさに情報がバラバラなときに「これは正確」「これは間違ってる」と言えない(予備知識がないから)のが現状です。(^^;)

> いけださんの書いた記事にほぼ正解のものがありますよ。

これは私ではなく、このウェブログの共同運営者である益岡さんが日本語化されたんですが、それはともあれ、MK77っていうものはそういうもの(ケロセンを使っているナパーム)だと理解していたので、「日常の用語では、軍人はMK−77のことをWP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ」という記述を見て、戸惑っている次第です。

手っ取り早くウィキペディアと思っても
http://en.wikipedia.org/wiki/Mk77
ファルージャ攻撃が「2005年」になっているし、記述はバラバラだし(多くの人が手を加えたような雰囲気です、英文的に)、ちょっとまだ落ち着いていなさそうで……。

> ところでMk.77は湾岸戦争で在庫を使い切ったと聞いてたんですが、まだ残ってたんでしょうか。

何か調べてるときに情報があったら書き込みますね。

せっかく丁寧なお返事いただいたのに、たいした返事もできずすみません。今日はもう休みます。後日、もうちょっと調べてみて、と思っています。
いけだ (2005-12-03 02:10:54)

■ WP=MK77という誤解
 件のRAIの番組(英語版)を観てみたのですが、
その中でMK77とWPを同一視しているところはありません。
ですので、「人体の内側から焼く兵器、その名は「ウィリー・ピート」〜イタリアRAIニュース報道」という記事の中にある

>「MK77」=「WP」はRAIの誤認で、

という表現はちょっとどうかな、と思います。
ただ、それらが別物であることを承知の上で、そのような誤解に至るような方向にミスリードしている感は否めません。

 2004年のファルージャ攻撃で白リン弾を使用したという話の後に、米軍はイラクでのMK77の使用を認めているという話が出てくる構成になってますよね。
Alice Mahon元議員からの再三の質問に対して「認識していない」という返答をし続けてきたイギリス国防省が、2005/6/13になって米軍によるMK77の使用を認めた、という形で。

 ナレーションでは、2003年の報告から米軍によるMK77の使用が明らかになったという言い方をしていて、具体的な使用の時期には触れていませんが、米軍が2003/3/31から4/2までの間、軍事目標に対してMK77を使ったことが報告されている、というのがイギリス国防省の回答です。この記事のコメント欄に上げられているRAIのサイトにある画像がその回答ですね。軍事目標に対するMK77の使用は条約違反にあたるものではなく、アメリカにとって隠さねばならないことでもないので、イラク戦開始当初における使用は秘密でも何でもなく、報道もされていました。イギリス国防省が公式にその事実を認めたのが2005/6/13だったということで、ファルージャなどの市街地でMK77が使用されたという話ではありません。

 もうひとつ、むしろこちらの方が問題かなと思うのですが、Alice Mahon元議員が行った調査の内容が正しく伝えられていません。
この記事の中でいけださんご自身が翻訳されているのでお分かりだと思いますが、その本来の内容は、「米英連合軍は、イラク戦争中、あるいは戦争後、ナパーム、もしくはそれに類似する兵器をイラクで使用したか否か?」というものです。しかし、ナレーションでは、「米軍は化学兵器を使用したか否か?」という質問に置き換えられています。その置き換えられた質問に対して、イギリス国防省が今までの主張を訂正し、米軍によるMK77の使用を認めた、という流れになっていますので、MK77=化学兵器という結論に達するのは、ある意味当然のことかと思います。MK77がどういうものかなんて、普通知りませんし。もちろん明らかな間違いなのですが。
 それに加えて前半で、元米兵であるジェフさんが白リンは化学兵器だ、と断言していることから、白リン弾(WP)=化学兵器=MK77という図式が出来上がってしまう、そういう構成になっているのではないか、と。

>「日常の用語では、軍人はMK−77のことをWP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ」という記述

もその辺りから発生した誤解ではないでしょうか。

 WPとMK77と化学兵器というキーワード全てをイコールで結ぶような表現はありません。ですが、化学兵器という言葉でWPとMK77を間接的に結びつけ、そういった誤解を招きかねない作りをしているのは確かで、何ともズルいやり方だなあ、と感じました。結果、多くの人が実際に誤認してしまった可能性があるわけで、こういうことがあると、ドキュメンタリー全体の信憑性に疑問符が付くだけだと思うんですけどねえ。

 それでは、失礼いたします。
kat (2005-12-08 21:26:05)

■ ありがとうございます(katさんへ)
>katさん

コメントをありがとうございます。仕事でしばらくオフラインになっていたのでレスが遅くなりました。

> >「MK77」=「WP」はRAIの誤認で、
>
> という表現はちょっとどうかな、と思います。

の点については、RAIのフィルムについての議論をいくつかのフォーラム(英語)で読んでいるうちに、私自身がわけがわからなくなったことが原因の記述です。

ご指摘どおり、RAIが「誤認」していたわけではなく、そのような結論を視聴者が抱くことを止めていない(ミスリードしている)のだと思います。

RAIのフィルムは焦点がはっきりしているとは言えず、その最大の問題点は、katさんのおっしゃる通り、まずはAlice Mahonは実際には「ナパームもしくはそれに類似する兵器を使用したか否か」と問うていることにまつわる点、それと、ジェフさん(元米兵)が「WPは疑問の余地なく化学兵器である」と断言したことについての裏づけなく、それを前提として話がどんどん進んでしまっている点。おそらく製作開始時の元々の意図としては「〜ではないのか?」と問いかけたかったのに、それを「〜である」と言い切る方向でまとめてしまっているのではないかと思うのですが。。。

> >「日常の用語では、軍人はMK−77のことをWP(白燐の頭文字)またはウィスキー・ピートと呼ぶ」という記述
については、米国の地方紙の記事の一部ですが、そのような記述は、今のところこの記事のほかには見つかっていません。また何かわかったら書き込みます。

ありがとうございました。
いけだ (2005-12-10 16:15:09)

■ NO TITLE
どうやら発端であるイタリアでも、件の写真がどのような死因か判別できないという人も出てこられました。
http://www.guardian.co.uk/Columnists/Column/0,5673,1647998,00.html

I asked Chris Milroy, professor of forensic pathology at the University of Sheffield, to watch the film. He reported that "nothing indicates to me that the bodies have been burnt". They had turned black and lost their skin "through decomposition". We don't yet know how these people died.

写真を見ただけで確たる死因や死に至る経緯が分かるなら、検死医も検死解剖も科学捜査も不要でしょうから、理性的な流れといってよいでしょう。

結局の所、今の段階では科学的検証無しにショッキングな写真を見て想像を膨らませる者、記録や他人の”自分はこう見る”的な発言を取り上げて「ほら見たことか!」と言う者、等々が散見されるばかりで、”燐の毒性によって死んだ”事を誰も立証しようとしていません。
そろそろ真剣に科学的検証を以て事実を明らかにする頃合いではないでしょうか。

問題提起の理由が、仮にいい加減でも提起したことに価値があるとしても、その結末がいい加減であって良かろう筈もありません。
それに燐の毒性についての医学的知見は、20世紀初頭に健康被害を及ぼす燐産業に関して制限されていますので、かなり豊富にあるはずです。
まぁ、ちょっと古いかも知れませんが。
冶金系 (2005-12-13 12:34:08)

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